過去と未来の交差点
THE STONE ROSES
『THE STONE ROSES』
『THE STONE ROSES』
最近、毎朝のように電車の中で聞いているのがこの、ストーン・ローゼズのファースト。1989年のアルバムです。
ストーン・ローゼズはイギリスのバンドです。もう解散してしまっています。日本ではどの程度知られているのでしょうか。ロックファンなら間違いなく知っていますが、一般的にはあまりメジャーではないのかもしれません。しかし、イギリスのロック史を語る上で決して外せない、「伝説」と呼ぶに相応しいバンドです。彼らがいなければ、90年代のブリットポップブームはもっと違った形になっていたでしょう。オアシスやヴァーブといったブームの立役者たちの中には、間違いなくローゼズの遺伝子が息づいています。
彼らはたった2枚しかオリジナルアルバムを残していません。しかも、ファーストとセカンドではガラッと違うので、「これがストーン・ローゼズの音楽」と正確に語ることは困難です。もっとも、彼らのパブリックイメージの9割5分はこのファーストの音でしょう。すなわち、エコーがかったトリッピーなギターと、ロックには珍しいジャングリーなドラム。その上に乗っかった、美しいメロディとハーモニー。セカンドは一転して、重い、大作感に満ちた音に変わるのですが、少なくともこのファーストは、シンプルかつオーセンティックなアルバムだと思います。
ローゼズは決して“目新しい”バンドではありません(20年前のバンドに対しこう言うのも変ですが)。彼らの音楽からは、ビートルズやジャム、スミスといったかつてのブリティッシュロックの匂いを嗅ぎ取ることができます。しかし同時に、決して古いとも感じない。オアシスや初期レディオヘッド、さらにはカサビアンあたりにまでもつながっていくその後の道筋が、耳の中で描けるからです。彼らの音楽には、イギリスのロックの過去と未来が両方詰まっています。ローゼズはよく、それ以前と以降のロックを分ける分水嶺という言われ方をしますが、僕はむしろ、過去と未来をつなぐ「交差点」のようなバンドだと思います。
関東は昨年より17日も早く梅雨入りして、ここ数日はやけに肌寒い日が続いています。こういうどんよりした空気の日には、威勢のいい曲で無理にテンションを上げようとするよりも、ローゼズのような、ふんわりと気だるい曲を聞く方が合ってるような気がします。うん。
代表曲の一つ。<Waterfall>
ボーカルのイアン・ブラウンは、最近ではソロでもローゼズの曲を歌うようです。代表曲<I Wanna Be Adored>。観客の合唱がすさまじいですね。まさに「アンセム」。それにしても、理系学部の学生みたいだったイアンの、ワイルドな変貌ぶりがすごい!