パワーとポップとギターと泣きメロ
直球ロックがここにある

 前々から聴こう聴こうと思っていながらも手をつけずにいるうちに、2008年で活動を休止してしまったエルレガーデン。結局僕がちゃんと聴いたのは、休止発表後リリースされたこのベスト盤だった。

 「聴くのが遅すぎた!」というのが最初の感想。こんなかっこいいバンドを活動休止するまで放っておいたなんて、自分はただのモグリじゃないかと軽くヘコんでしまった。

 “ガーデン”という牧歌的なバンド名のせいか、なんとなくサウンドも歌詞も繊細な、ブリティッシュ的音楽を想像していたのだけど、蓋を開けてみたら、そこに詰まっていたのは高速ギターリフが炸裂しまくる、超アッパーなロックンロール。

 クールでエネルギッシュなギターと、重量級だがスピード感のあるドラム&ベース。ちまちました小細工など毛ほどもない。彼らの音楽はどれもど真ん中狙いのストレートだ。Aメロはグッと押さえて、サビで一気に爆発、という使い古された曲展開も、エルレの手にかかればむしろ爽快感がある。

 そして、彼らの最大の武器はポップなメロディ。日本の歌謡曲的な土壌に根付いた、随所に“泣き”が入るようなメロディが、彼らが大きなポピュラリティを掴んだ所以だろう。

 ライヴ会場はどこも10代ロックファンのモッシュ&ダイヴだらけというのも納得できる。フラストレーションをガソリンに変えて突っ走るようなエルレガーデンの音楽は、若ければ若いほど夢中になれるのかもしれない。


 だが、僕自身は、もし10代の頃に彼らに出会っていたとしても、おそらくあまり好きにはならなかったと思う。

 エルレガーデンや、当時で言うとグリーン・デイやハイ・スタンダード、そういった明快でわかりやすい音楽は、その頃の僕には子供だましのように感じられ、退屈だった。それよりももっと複雑で、独特で、さらに言えば少々聴きづらいくらいの音楽の方が、人生の真実であったり世界を読み解く知恵であったり、そういうものを教えてくれるような気がしていたのである。音楽に限らず本も映画も、“わかりにくい”ことの方が“本物”っぽいような、そんな気がしていたのである。

 それから時間が経って、いつの間にか僕は「わかりやすくても、わかりにくくても、面白ければそれでいいじゃん」という、なんとも力の抜けた感覚で音楽を聴くようになっていた。いい加減になったのか、感性が一回りして逆にわかりやすいものを好むようになったのか、そしてそれらをひっくるめて、それが「年をとった」ということなのか。なぜ変わったのだろうと改めて考えてみても、自分のことなのに案外理由がよくわからない。個人的には、そんな感性の変化みたいなものを感じた一枚である。

 メンバー4人は現在ソロ活動中。ボーカルの細美武士は新バンドthe HIATUS(ザ・ハイエイタス)の結成を発表し、いよいよ今月27日に1stアルバム『Trash We’d Love』をリリースする。


<Red Hot>のPV。細美武士は帰国子女なのだろうか。ネイティブみたいな英語の発音をするので、何も知らずに聴いたら洋楽バンドだと思ってしまいそう

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