ただのリハーサルであっても
やはり彼は「大スター」だった

 公演が終わり、ようやく観ることができた『THIS IS IT』。公開最終日にギリギリ行くことができた。平日にもかかわらず、夕方以降の回は全て売り切れ。昼間の回の隅っこの席をなんとか手に入れることができたのだが、この回もほぼ満席。なんでも、日本における本作の興行収入はアメリカに次いで世界第2位なのだそうである。地球規模の大スターであるマイケルだが、とりわけ日本人は彼のことが大好きなのだ。

 映画館の客席はまさにそのことを証明していた。おばさんグループに若いカップル、小さい子連れの主婦(この子は<スリラー>の映像を見て大泣き)と、客層は文字通り老若男女。満席にもかかわらず上映前は奇妙に静かで、それが逆に観客のこの映画に対するモチベーションの高さ、マイケルに対する思い入れの深さを感じさせた。

 この『THIS IS IT』は、マイケルが生前取り組んでいた同名タイトルのコンサートのリハーサル映像を編集したもの。元々は公開する目的はなく、単なる記録用に回していたカメラの映像がその素材となった。内輪向けの映像だけに、作られていない等身大のマイケルを見ることができ、時折スタッフや出演者と交わす会話などには、これまでに感じたことのないような身近さを覚える。

 だが、映画の中心はあくまでマイケルのパフォーマンスだ。本番さながらにステージ上で歌って踊るマイケルの映像が、コンサートのセットリスト順に1曲ごとに編集され、本番で使用される予定だった特殊映像の断片なども挟みながら、僕ら観客は開催されるはずだった“幻のコンサート”を想像していく。この映画は、作業風景や舞台裏を見せるメイキング映像ではなく、ましてや思い出を振り返るような湿っぽい追悼映像集でもなく、堂々たる1本の“ライヴ・ムービー”なのである。

 それにしてもマイケルのコンサートってすごい。聴覚だけでなく、さまざまな特殊効果を用いて視覚に訴えかける演出や、「I Love You」「Heal The World」という強いメッセージ。そして何よりもあのダンス。1992年の「デンジャラス・ツアー」を収録したDVD『ライヴ・イン・ブカレスト』を観ていたら、ラストにはでっかい地球が舞台上に現れ、それをマイケルと世界中の民族衣装を着た子供たちがグルッと囲み、そしてラストにはマイケルがロケットを背負って空に飛んでいってしまった。まるで一人でディズニー・ランドをやっているかのような、ものすごいエンターテイメント性の高さである。

 そのようなハイテンションのステージを作るのは、やはり並大抵のことではない。『THIS IS IT』を観ていて興味深かったのは、自らが細かくスタッフに指示を与え、気に入るまで何度でもやり直すマイケルの姿である。この映画を観るまでは、マイケル自身があれほどまでに主体的にディレクションをしているとは思わなかった。TV画面では見ることのできない、ゴシップやスキャンダルとも切り離された、一人のアーティストとしてストイックに作品作りに臨むマイケル・ジャクソンの姿は新鮮だった。

 映画のハイライトは何といってもラスト手前の<ビリー・ジーン>。マイケルが一人、スポットライトを浴びながらあのダンスを踊る。リハなのでダンス自体はかなりラフなのだが、「貫禄」というか「オーラ」というか、言葉では説明できない、世界でただ一人彼しか持ち得ない圧倒的な空気があり、観客全員がゴクリと唾を飲み込んだように思えた。

 今月19(土)から再公開が始まる。もう一度観に行ってしまうかも・・・。


『THIS IS IT』予告編

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