2010年大河ドラマ 『龍馬伝』

完璧すぎるこの男
内心ムカついたこと、ありませんか?
内心ムカついたこと、ありませんか?
年末の『坂の上の雲』が大々的なイベントだったせいで、こちらは少々日陰に追いやられた感があるが、何はともあれ今年の大河ドラマ『龍馬伝』がスタートした。「龍馬が福山雅治ってどうなの?」と不審の声はあちこちで聞こえるが、何はともあれ僕は1年間見守ろうと思う。なにせ龍馬なのだから。
坂本龍馬を嫌いな人っているんだろうか、と思う。そりゃ中にはいるんだろうけど、間違いなく圧倒的少数派だ。だってかっこいいもの。強くて、ユーモアがあって、自由闊達で、歴史の表舞台に風のように舞い降りたかと思ったら、去り際も鮮やか。おまけに名前まで洒落ている。そしてその「龍馬」という名を口にするだけで(あるいは文字に書いてみるだけで)、なんだか胸に青空が抜けるような、清々しい気分になる。
そんな日本史上最大のスター坂本龍馬に欠点を挙げるならただ一つ。あまりに完璧すぎることだ。そう、みんな実は内心龍馬に嫉妬したことが一度くらいはあるんじゃないか。僕は『竜馬がゆく』を初めて読んだとき、正直ちょっとムカついた。ああいう見事な快男子には、憧れ以上に敗北感を抱くことになり、切ない。
実は今回の『龍馬伝』、そういう嫉妬が最初の切り口になっている。そのネガティブな感情の主は岩崎弥太郎(香川照之)。ドラマ冒頭はいきなり、弥太郎の痛烈な龍馬評、「あんな腹の立つ男はいない!」という言葉で始まるのである。龍馬と弥太郎は同じ土佐に生まれ育ったいわば幼なじみ。だが弥太郎は、剣の腕が立つのに温和な平和主義で、おまけに女の子からもモテる龍馬にいつも嫉妬していた。今回のドラマは基本的にこの岩崎弥太郎の視点で進むことになる。
これはとても興味深いアプローチの仕方で、つまり僕ら視聴者は、龍馬べったりではなく、距離をおいて客観的、批評的立場から坂本龍馬を眺めていくことになるのである。生まれながらにしてヒーローだったわけではなく、悩み傷つきながら一歩一歩僕らの知る「坂本龍馬」になっていくという、極めて“生身”な龍馬が描かれることになるだろう。それは、「自由で豪快で海を眺めて夢を語る」みたいな、現在流通しているステレオタイプの龍馬とはまったく異なる人物像になるはずだ。
第1回を見た限りでは、“福山龍馬”は気の優しい文系青年、みたいな感じでかなり意外。だが、「まさかの福山雅治」というそもそものキャスティング含め、意外性が今回のドラマの重要な切り口となりそうなので、観るこちらとしても、まっさらな気持ちでいた方が楽しめそうだ。
脚本は『HERO』や『容疑者Xの献身』の福田靖が、演出チーフは『ハゲタカ』の大友啓史が担当(音楽の佐藤直紀も『ハゲタカ』チーム)。ドリームチームのようなスタッフ布陣にも期待大。
第1回再放送は土曜の13:05からです。
『龍馬伝』公式HP