パッと見“地味”だけど
聴けばきっと好きになる

 メガ・セールスを記録したわけでもなく、見た目にインパクトがあるわけでもなく、マイナーというほどではないものの、なまじ知名度があるせいでかえって地味な印象を与えてしまうバンド。そんなファウンテインズ・オブ・ウェイン(以下FOW)が僕は大好きだ。

 FOWはアメリカの4人組ロックバンド。デビューは1996年だが、最初のヒット曲に恵まれたのは2003年で、ようやくというか今更というか、デビュー後7年も経ったこの年にグラミー賞の「最優秀新人賞」にノミネートされる(されてしまう)。こんなトホホなエピソードもあるが、本人たちはいたってマイペースに活動を続けており、今日に至るまで4枚のオリジナル・アルバムと1枚のレア・トラック集を発表している。

 バンド名をタイトルに冠したこのアルバムは、96年リリースの彼らのデビュー作。評価は決して低くない作品なのだが、『オディレイ』(ベック)や『モーニング・グローリー』(オアシス)といった同時期の名盤と比べると、ほとんど忘れ去られているといっていい(先日ワゴンセールのなかに見つけて悲しくなってしまった)。もっとも、それも無理からぬ話で、確かに今聴き直してみても「地味だな〜」と思う。

 ただし、もちろん「地味=質が低い」ということではない。むしろどの曲もデビュー作とは思えないくらいポップに洗練されている。メロディはバラエティに富んでいるし、アレンジだってすごく良い。ただ全体として「大人しい」だけなのだ。クラスに必ず一人はいる「見た目は地味なんだけど、話してみると面白い奴」みたいに、最初の印象に惑わされてしまっては、FOWというバンドを深く味わうことはできない。

 彼らの音楽は、ディストーション・ギターの歪んだ音色とシンプルな歌メロをかけ合わせた、オーソドックスなギター・ロック。パワー・ポップやグランジからの影響はうかがえるものの、アコースティック・ギターや鍵盤を効果的に取り入れていたり、コーラスを細かく使い分けていたりしていて、一通り聴くとむしろビートルズに近いような印象を受ける。

 このファーストは、実質的にはボーカルのクリスとベースのアダムだけでレコーディングされた(残りの2人はレコーディング後に加入)。たった2人という制作体制のせいか、複雑なことには手を出さず、ひたすらメロディとアレンジだけで勝負しているようなところがある。そのあたりが地味に思われてしまう所以なのだが、逆に僕はその手作り感と潔さを猛烈に支持したい。

 前回エルボーでも書いたが、音楽が音階の連続で表現されるものである以上、結局のところ聴く者の心を打つのは、何よりも美しいメロディなのだろう。ビートルズがなぜ時代を超えて聴き継がれているのかといえば、彼らが良いメロディを量産したという一語に尽きるのである。

 インパクトには欠けるし、目新しさもないし(むしろ歌詞なんかちょっと古臭い)、だけど彼らFOWを聴いていて「いいな」と感じるのは、きっとそういうことなのだ。


演奏するFOW。曲は<Sink To The Bottom>

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