アイドルでもアーティストでもない
Perfumeという名のGAME

 2年前か3年前か、はっきりとは覚えていないのだけど、友達数人とカラオケに行ったときのこと。酔っ払って疲れていたのか、一人が歌い終わったら休んで、しばらく経ったら次の人、という具合の極めてまったりしたカラオケだった。僕はまばらな曲予約の合間あいまにモニター画面に流される、アーティストのインタビューやコメントをボーっと眺めていた。

 その映像のなかにPerfumeがいた。確か「新曲が出ました」とか、そういう内容だったと思う。衣装も喋り方もちょっと野暮ったくて、そのときは彼女たちがまさかこんなに人気者になるとは思わなかった。

 3人とも若いので、てっきりデビュー後いきなり売れたかのようなイメージがあるが、実は意外と苦労人。結成は2001年。まだ彼女たちが小学生の頃だった。インディーズでCDを出しながらデパート屋上のイベントやレコードショップの店頭などでライヴを行う下積み時代が長く続く。

 そんな彼女たちがついにブレイクを果たしたのが2008年。シングルのオリコンチャート首位獲得、ライヴ会場は中規模ホールからついに武道館へ、そして年末には紅白出場と、人気を一気に全国区にした。そんな文字通りサクセスストーリーな1年の幕を切って落としたのが、このセカンドアルバム『GAME』である。オリジナルアルバムとしては初になるが、全12曲の大半がタイアップ曲なので、実質的にはベストアルバムに近い豪華さだ。


 Perfumeのおもしろさは、“ありそうでなかった”感だと思う。音楽のジャンルが、ということではなく、彼女たちの存在そのものが既存の枠では捉えがたい。

 まず、彼女たちに「アイドル」というカテゴリーは当てはまらないだろう。男性をターゲットにすることはあっても、そこには男の妄想やフィクションに媚びるような気配がないからだ。<チョコレイト・ディスコ>に見られるように、むしろ彼女たちは女の子っぽさを「女の子っぽさ」という一つのモノとして逆手に取り、ちょっぴりギャグっぽくアウトプットしているようなところがある。

 かと言って、「アーティスト」というのもしっくりこない。楽曲は全てプロデューサーの中田ヤスタカの手によるものであり、そこに彼女たち自身の意思やメッセージといったものは介在しない。そもそもパフォーマーとしてのPerfume自体、ジェスチャー的で物語仕立てのようなダンスにしても、加工されたボーカルにしても、生身の体温が欠落している。

 つまり彼女たちには実体がないのだ。3人は電子的なテクノサウンドによって映し出された幻影に過ぎない。全ては用意周到に仕組まれた演技。Perfumeというのはアイドルでもアーティストでもなく、コンセプトのことなのである。

 だが、その一方で、トークなどで見られる3人のパーソナリティは非常にユニークで、普通の日常を過ごす女の子としての体温が感じられる。その落差がまたさらにおもしろい。そういった意味では、彼女たちは単純なマリオネットではなく優れた天然の役者であり、Perfumeという極めて知性的な遊びを煽るプレイヤーと呼べる。

 タイトル曲<GAME>で歌われる、
「Play the GAME, try the new world」
という歌詞は、Perfumeという存在を比喩した、ある種の宣言文のように聞こえる。


<シークレット・シークレット>のPV。数あるPerfumeのビデオのなかでも、もっともコンセプチュアルな一本

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