PUFFY 『honeycreeper』
「歌」の個性と「曲」の個性
一粒で二度美味しいロック・アルバム
一粒で二度美味しいロック・アルバム
2007年リリースの、PUFFY10枚目のアルバム『honeycreeper』。
収録された13曲は全て外部のミュージシャンの手によるもので、その面子を列挙すると、まずおなじみ奥田民生と井上陽水コンビ、前作アルバムから続投のブッチ・ウォーカー(アヴリル・ラヴィーンなどを手がけるプロデューサー)、スウェーデンのバンドThe Merrymakersのアンダース・ヘルグレンとデビッド・マイアー、そしてチバユウスケ、吉井和哉、真島昌利、山中さわお、さらにグループ魂の宮藤官九郎と富澤タク、最後にピエール瀧、となる。
存在感を示すのはチバユウスケ、吉井和哉、真島昌利、山中さわおら国内のロック・ミュージシャンたち。彼らの曲が核となり、全体的にロック色が強いアルバムに仕上がっている(海外の3人についてはよく知らなかったのだが、やはり皆ロック畑出身のアーティストらしい)。
それぞれ個性の強いソングライターばかりなので、クレジットを見なくても、誰がどの曲を書いたかすぐにわかる。本人が歌っているところを思わずイメージしてしまうし、当のPUFFYの2人も、「チバユウスケっぽい」「吉井和哉っぽい」「ヒロトっぽい」歌い方を意識しているようである。なので、PUFFYのアルバムでありながらも、各ソングライターの個性も同時に楽しめるという、「一粒で二度美味しい」的オトク感のある作品だ。
同時に、それぞれ自分のバンドではやらないようなタッチの曲を書いているのも聴きどころ。PUFFYというキャラクターに合わせたせいなのか、あるいは“自分”という縛りが取れたせいなのか、みんなキャラがいつもと違う。みんな敢えて“外そう”としている。チバユウスケや吉井和哉は普段「二枚目」なのに、このアルバムでは「三枚目」キャラだ。そういった珍しさの点でも、このアルバムは邦ロック・ファン向けの、しかもアクセント的なアイテムと言えそうだ。
PUFFYはデビュー以来、楽曲を外部のミュージシャンの手に委ねてきた。初期の奥田民生は言うに及ばず、その時その時でさまざまなアーティストの個性に乗っかるのが、彼女たちの得意技である。
だが、そのような“外注依存”でありながらも、PUFFYが一貫して「PUFFY」として揺らがなかったのは、何よりもまず彼女たち自身の個性が強かったからだ。初期の頃こそ2人のキャラクターに合わせた曲をあてがわれていたが、最近はそんなハンデも必要としなくなっている。結局、どんな曲が届いても、2人が歌えばPUFFYになってしまう。PUFFYという器がどこまでも頑丈でキャパが大きいからこそ、他のアーティストは安心してどんな水でも注げるのだ。曲の半分が“コント”という、グループ魂全員参加の異端曲<妖怪PUFFY>などは、そういった歌い手と作り手との良い関係性の賜物である。
今年リリースされた現時点での最新作『Bring it!』では、斉藤和義や椎名林檎、細美武士らが楽曲提供をしていて、近年のPUFFYはロックへ傾倒しているようだ。最近はロック・フェスにも頻繁に出演しているみたいで、その独自のポジションにはますます磨きがかかっている。
<君とオートバイ> 詞・曲:チバユウスケ
<くちびるモーション> 詞・曲:吉井和哉
<サヨナラサマー> 詞・曲:山中さわお
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