高村薫「リヴィエラを撃て」(ハードカバー)
サーは要らない

 
スパイ小説ってくくりでいいのかな…登場人物ががんがん死んでいきます。
そりゃスパイですから(全員じゃないけど)、悲劇的に死にます。
高村先生の作るキャラクターはみな魅力的なので、その都度胸が痛いです。

それと、地名にも人名にも、カタカナが多くてしんどかったです。
しかも視点が次々に変わるから、読み流してると誰が誰やら…。

IRAやMI5、MI6、そしてCIAあたりの基礎知識と、主だったピアノ曲などの素養を身につけてから読んだら、もう少し理解できようか。
とりあえずもう一回は読まないと理解できないということは、よく分かった。
文庫版買うかな…。
 

ジャックにうまく感情移入できなかったので、前半は読むのがきつかったです。
どんな男の子なのかいまいちわからなかった。
優秀な?テロリストで、ひどいやり方で何人も殺しているひどい人間なのに、研ぎ澄まされて魅力的に描かれていて、うさんくさい。
リーアンはそんなでもなかったのだけど。
で、この2人は結局殺されちゃうんだからすぐ終わるだろう、とたかを括っていたら案外このパート長くて…。
でも、ジャックが心の中でノーマンに語りかけてるとこは、ずしんと来た。
かけちがったボタンって、こういうことなのかなぁ。
「僕は生まれ変わりたい。いつの日か、どこかであなたと出会いたい。そのときは、ピアノとウィスキーとバラの日々だ。そのときは、僕はテロリストではなく、あなたはスパイではない」

そしてサラの死に様は辛かったです。大人の愛って、歯がゆい。

後半は、キムに手島さん、サー・ノーマン、ダーラム候にレディ・アンががっしがし動き出すので一気に読めました。
シンクレアは、エイドリィの関与しない、知らない世界を作りたくて、それがジャックとのひとときだったの?
シンクレアのピアノの音の描写は素晴らしかったです。
「BECK」や「のだめ」で、漫画で音楽を表す方法を感心してみていたけど、
言葉オンリーで音楽を表すのって、相当の筆力がないと無理だね。
さすが高村薫…リアリティの鬼。
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